全国修士設計展 -結果報告-



グランプリ

大島 彩/おおしま・あや (東京藝術大学大学院)

支えられた記憶ーアンリアルなリアリティーをつくる空間の7つの視界ー

        

従来、空間において尺度を中心とするフィジカルなリアリティーが、一般的にも強く求められ、また受け入れられてきました。その一方で、それとは別種のリアリティー、つまり感受・想像する側でのリアリティーというものが存在すると考えます。人は空間をどう感受し、またそれは実在する空間との間に、体験としてどんなブレを生むことができるのか。そのブレこそが、心のふくらみ・はずみ・広がりとなって、フィジカルな占有空間を超えるリアリティーを空間にもたらすことができるのではないか、という期待をもっています。それを実現するための空間的ツールを、的経験をもとに抽出されてきた空間図像から、「7つの視界」として提示します。

 
青木淳賞

泉 秀紀/いずみ・ひでのり (近畿大学大学院)

都市のcrack - 集合住宅における中間体としての壁の可能性に関する考察 -

        

80本の聳え立つ塔からなる群塔状集合住宅の提案。本計画は、建築における「壁」を、空間に境界をつくり、閉じるための要素としてではなく、空間相互を繋ぐものとして捉え、中間体、媒体としての壁の可能性を見出すことを目的とした計画である。現代の高密度化する都市居住空間において、庭や縁側といった中間領域的空間は厚みをもった壁へと収束していくと考える。様々な厚みをもった壁は多様な空間関係を生み出し、壁は中間体、媒体として機能するようになる。そして人々の生活の中心は部屋の中心ではなく、その境界部分へと移行する。僅か数cmの壁の厚みの中に集まって住むことの豊かさを発見する。

 
大野秀敏賞

梅中 美緒/うめなか・みお (工学院大学大学院)

小さな部屋/小さな時間
        

建築を変えることで空間を変えようと思っていた。でも砂漠で、時間と共に刻々と移り変わる情景の変化を見たとき、建築を変えずとも空間は変わると思った。建築の時間をテーマに設計する手法の提案を行なう。実験「(時間軸を持たない)プランやセクションからではなく(時間軸を持った)現象や出来事から空間を作れるのか」PROJECT1「文学から空間を作れるのか」『方丈記』を住居論として読み解き方丈の庵を文学描写のみから立ち上げる。PROJECT2「出来事や現象から空間を作れるのか」自分が思い描く現象をきっかけとして設計する手法を試みる。私が受けた衝動や感銘を、極限に削がれた環境での事象の豊かさ/宇宙を小さな部屋に詰め込んでいく。

 
手塚貴晴賞


中川 沙知子/なかがわ・さちこ (早稲田大学大学院)

In pursuit of my scale

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人が、モノが、空間が、交わる関係性をそのまま建築にしたい。本来建築を設計する際の過程では、全体の構成を計画し、詳細な内容を次に決定していく。しかし、絵を見る鑑賞者も建物を巡る体験者も、視覚焦点の範囲に収まるものを一つ一つ把握し、モンタージュして全体を認識しており、その視点は対照的だと言えるのではないだろうか。本計画では、設計方法として実際に空間の一部を立ち上げ、体験者となって空間の関係性を想像しながら全体を構成していくスタディを試みた。その結果、より詳細でリアルなイメージの集合、つまりはものの関係性が基本となった、現象的建築が提案できたのではないかと考えている。

 
宮本佳明賞

森山 茜/もりやま・あかね (京都工芸繊維大学大学院)

mille-feuille

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テキスタイルの建築における可能性 -布の塊-
建築空間におけるテキスタイルの可能性を探るプロジェクト。「一枚の布」ではなく、「塊としての布」が、光を如何に扱うことができるか。テキスタイルの新たなあり方を自然現象や日本建築から新たに抽出し、建築に還元する。

 
古谷誠章賞


高倉 潤/たかくら・じゅん (工学院大学大学院)

隣地間研究

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論文にて外部空間とその特徴、開口部の関係性を発見しprojectにおいてそれらを展開していくことで、外部空間を織り込んだ3つの特徴的な住居群を形成する。これらの住居群の全体像は決まっていないが将来的な全体像を決めていくのは、場所、住人、住み方、理想とする全体のあり方に応じた外部空間同士の関係性である。(二つとして同じ住居群は生まれない。)従来行われてきた敷地全体を”殺菌”するような設計手法とは異なり、既存建物の現状をふまえ、それを尊重しながら豊かな外部空間を織り込んでいくという手法は、使われていない隙間空間の多い都市の町並みに対して有効に働き、”日本的”な町並みを形成していけると考えている。


(敬称略)